伝達力と表現力
聞き手にメッセージを届けるためには伝達力と表現力が求められます。
伝達力:相手に情報を伝える力(わかりやすさ)
伝達力とは「相手に情報を伝える力」のことです。ここで注意したいのは「正しい情報を発信する能力ではない」という点です。スピーチにおいて重要なのは、「情報を発信すること」ではなく、「相手に伝わること」です。そのため、相手が受け取りやすい形にして情報を発信しなくてはなりません。
表現力:効果的に情報を伝える力(インパクト)
表現力は、「効果的・印象的に情報を伝える力」です。役立つ情報や、正しい情報を伝えても、すぐに相手の記憶から抜けてしまえば意味がありません。スピーチをとおして相手の興味・関心を高めたり、行動を促したりするためには「印象付け」が必要です。
伝達力と表現力は相互に関係している
伝達力は相手の理解や共感を促すための力です。では、「印象の薄い言葉」と「印象強い言葉」のどちらが理解や共感を促すかというと、断然後者であると言えますね。つまり、表現力が高ければ高いほど、伝達力も向上するのです。
ただ、スピーチは印象強くあれば良いというものではありません。きちんと、相手にメッセージを届けるために適切な伝達方法を選ぶことで表現力を生かすことができるのです。つまり、伝達力無き表現力は、ただの独りよがりであり、自己満足に過ぎないのです。
伝達力と表現力を高める
伝達力や表現力は、「スピーチの構成・脚本」で決まります。
スピーチの構成(骨組み・流れ・全体像)
朝礼スピーチのような短いスピーチでは、構成が命です。1~3分程度のお話であれば、以下の「構成」に対して「内容」を当てはめれば軸がブレないスピーチになります。
- 結論 → 理由 → まとめ(結論・主張・教訓など)
- 概要 → 詳細 → まとめ(結論・主張・教訓など)
- エピソード → まとめ(結論・主張・教訓など)
- つかみ → エピソード → まとめ(結論・主張・教訓など)
一般的なスピーチでは、1番から3番までの手法が使われます。その中でも、自身が体感した物事や、事例などの詳細エピソードがあれば、メッセージ性や説得力が高まりますので、エピソードを含む構成が好ましいと考えています。
とことん、印象強さを突き詰めるなら4番の「つかみ」から入る構成になります。具体的には、驚きの事実を伝えたり、クイズを出したり、パフォーマンス(実演)をしたり、体験をしてもらったりするなどの工夫を用いて感情を揺さぶります。その後に、「つかみ」を生かすエピソードを語るのです。
つかむだけつかんでおいて、そのつかみとは関係の無い話を始めたら興醒めです。
スピーチの脚本(何を、どのように伝えるか)
何を伝えるか
スピーチの内容を決めるのは以下の3つの要素です。
- テーマ(聞き手に何を感じ、どう行動してほしいか)
- 自分の主張や結論(伝えたいことは何か)
- 具体的な話材(ネタ)
スピーチは、テーマや主張がありきです。義務感でスピーチをこなしている方は「ネタ」から探す傾向にありますが、まずは「何を主張したいか」「聞き手に何をしてほしいか」があって、初めてそのテーマや主張に合ったネタを探しましょう。ネタの源泉は以下のとおりです。
- ビジネス上の体験談
- 日常の体験談、見聞きしたもの
- 将来の夢
- 今、抱えている問題や課題
- 趣味・熱中しているもの
- 自己啓発・学びになったこと
- ニュース・時事問題・社会情勢
- メディア(新聞・テレビ・雑誌など)
- 書籍・ネット
- 学術的な理論
- そのほか雑学など
どうやって伝えるか
構成と内容が明確になれば、「わかりやすいスピーチ」ができるようになります。もちろん、選択したネタ次第では印象強くもなります。あとは、「伝え方」を工夫して、さらに印象強く伝えていくことが大切です。
- 常識や思い込みを覆すつかみ
- クイズを出す
- 感情を出す
- 抑揚をつける
- 沈黙する
- 動きを付ける
- 実物を見せる
- ツールを使う
- 実演する
- 体験させる
- 五感を刺激する