内容を理解させ、納得させ、共感させる技術
スピーチの内容を聞き手に理解させ、納得させ、共感させるためには、「聞き手がスピーチの内容を、情景としてイメージできること」が必須条件となります。
聞き手は、きちんとスピーチの内容を理解していれば、その情景を思い浮かべることができます。また、その情景が心動かされるものであった場合に強い印象(インパクト)を与えることができるのです。
聞き手のイメージ化をサポートする方法
聞き手のイメージ化を促進する方法には以下のようなものが挙げられます。
- 具体的なエピソードを話す(体験談・事例など)
- たとえ話をする
- イメージを見せる(絵・写真・動画・実物・実演など)
具体的なエピソードを話す
以下は小学生の作文です。では、文章を読んで、その情景をイメージしてみてください。
「今日は、サッカーをしました。楽しかったです。」
さて、みなさんはどのような情景をイメージされたでしょうか。
- 誰とサッカーをしていますか?
- どこでサッカーをしていますか?
- 何人でサッカーをしていますか?
- 試合?練習?休み時間のお遊び?
何も説明がないので、みなさんは思い思いの情景をイメージされたことでしょう。このように、話に具体性がないと、聞き手が受け取る情報に大きな差異(情報の齟齬)が生まれてしまうため、伝えたいことがうまく伝わらなくなってしまうのです。
5W1Hや5W3Hで具体性を持たせる
エピソードを伝えるときは、必ず5W1Hや5W3Hを駆使して、内容を具体化しましょう。たとえば、「学校のグラウンドで」「体育の時間に」「サッカーのクラス対抗戦をした」などの情報を付け加えるだけでも、聞き手のイメージを明確にしていくことができるようになります。
たとえ話をする
難しい話をするときには、たとえ話をするのが一番です。たとえ話とは、とある物事を説明する際に、別の物事に置き換えて説明することを言います。
たとえば、「作る」を主体とした話であれば、大抵のものは料理に置き換えることができます。なぜなら、「素材を加工して完成品を作り、誰かに使ってもらう」という流れが共通しているからです。さらに、一連の流れだけでなく、「素材へのこだわり」「加工のコツや技術」「加工作業の効率化」「器具の整理整頓」「経験と成長」「誰かに喜んでもらえる喜び」などの各プロセスだけに焦点を当てても置き換えることができます。
たとえ話は動詞で作る
私は、最も簡単にたとえ話を考える方法として、「動詞が共通しているものを見つけ出す」ことを推奨しています。つまり、「作る」「戦う」「守る」「壊す」「治す」「曲がる」「出す」「消す」「走る」「開ける」「書く」「進む」「変化する」などの動きが共通していると、たとえ話が作りやすいのです。
イメージを見せる
最も確実に聞き手のイメージ化をサポートする方法は、実際に見せることです。頭の中で想像させると、本人の解釈による差が生じますが、実際に絵や写真、動画・実物を見せたり、目の前で実演したりすれば、解釈による差を抑えることができます。
物事を口で説明するのは難しい
みなさんに質問です。パソコンを知らない人に対して、口頭だけで「(デスクトップにある)アイコン」の説明をする場合、みなさんなら何と説明しますか?
たとえば「パソコンの画面の中にある絵」と言っても、それ自体を見たいことがないのですから、パソコンの中にどのような絵があるのか想像できません。大きな1枚の絵が表示されているのか、それとも小さな絵が並んでいるのかも分からないのです。
でも、実際に目の前でパソコンの画面を開き、「これがアイコンだよ」といって指させば一発で理解してもらうことができます。これが、「実物を見てもらう」ということです。
部下や後輩への指示出しのヒントにも
口頭説明を理解してもらうことは本当に難しいです。そのため、部下や後輩に仕事を説明するときも口頭のみの指示は大変危険です。マニュアルを用意したり、イメージ図を見せたり、実演によるお手本を見せたりなど、明確なイメージを見せた上で、指示を出していきましょう。
もしかすると、部下や後輩が正しく仕事をしてくれない原因は、あなたにあるのかもしれません。このように考え、指示の仕方や教え方を改善できる上司・先輩は、大変素晴らしいと思います。